紅葉盆栽の育て方
紅葉盆栽は季節による姿の変化を楽しむことができる魅力的な盆栽です。紅葉の魅力、管理方法、用土、灌水、施肥、病害虫対策、作業内容、植替え、芽摘み、葉透かし、芽かき、剪定、針金形成、古葉取り、繁殖方法、そして購入場所について詳しくご紹介します。
紅葉盆栽の魅力
紅葉は、春の芽出しから秋の紅葉、冬の寒樹姿と季節ごとの変化を楽しむことができます。庭木としても人気がありますが、盆栽樹種としてもとても人気です。盆栽としては、葉の大きな品種ではなく、姫性や八房性などの葉の小さな紅葉が、壮大な景色を作りやすく人気です。舞姫もみじ、琴姫もみじなど様々な品種があります。
紅葉盆栽の管理方法
紅葉盆栽の管理方法について見ていきましょう。
適切な管理場所
紅葉盆栽は日光を好みますが、直射日光に当てすぎると葉が焼けてしまうことがあります。春や秋は一日中遮光をせずに管理して良いですが、夏場や暑すぎるときは遮光を欠かさないようにしましょう。夏の直射日光に当てすぎてしまうと、葉が焼けてしまうため細心の注意をします。
尚、よく日に当てて、朝露や夕方の葉水を十分与えることで、見事に綺麗に紅葉するため、展示会で飾る際はそのような管理を心掛けましょう。
冬季の管理場所
紅葉は寒さに強いですが、風による乾燥や霜を避けるため、落葉後2・3回霜に当ててからムロに入れましょう。
紅葉盆栽の用土
用土の種類
モミジに適した用土は、排水性が良く保水性にも優れたものです。一般的には、赤玉土や桐生砂を使用したバランスの良い用土を選ぶことが推奨されています。
用土の配合
筆者は硬質赤玉土:桐生砂を7:3程度で配合して使用しています。この配合により、紅葉の適切な排水性と保水性を確保することができます。しかし適切な用土の配合は個体や環境によって異なる場合もあるため、実際の状態を観察しながら微調整することが大切です。
紅葉盆栽の灌水
紅葉盆栽の灌水方法について見ていきましょう。
灌水のタイミング
紅葉盆栽は乾燥に弱いため、土の表面が乾いたら水を与えるようにしましょう。特に夏場は水切れに注意が必要です。
灌水の頻度と注意点
盆栽の種類や季節によって灌水の頻度は異なりますが、春・秋は1日1回、夏は1日1~2回、冬は2~3日に1回くらいが目安です。ただし、樹の状態や周囲の環境によって調整が必要です。過剰な水やりは根腐れや病気の原因になるため、適切な量の水を与えるようにしましょう。
紅葉盆栽の施肥
紅葉盆栽の施肥は、健康な成長を促すために欠かせません。以下では、施肥方法とタイミング、注意点について説明します。
施肥方法
もみじには、緩効性肥料と液肥を使用します。筆者のおすすめは、バイオゴールド・IBワンス4号です。どれも盆栽園・ホームセンター・通販で購入可能です。盆栽用のバランスの良い肥料を選び、適量に与えれば、元気に育ってくれます。樹勢が落ちた時には活力剤を使用しましょう。尚、肥料・活力剤を与える場合は植替え直後は避けましょう。
施肥のタイミングと注意点
もみじの施肥は、若木の場合は基本的に春の芽出しから冬のムロ入れ前までずっと置き肥をしておいて問題ありません。梅雨時期の肥料の溶け出しが気になる場合は、その時期だけ外しておきましょう。
完成木・古木の場合は春先の施肥は芽力が強くなってしまうため少しだけ与えるようにしましょう。秋の施肥は翌年の成長を助ける為、他の木と同じく通常程度与えます。
紅葉盆栽の病害虫対策
紅葉は、意外と樹勢の弱い樹で、病気や害虫には注意が必要です。以下では、主な病気と対策方法、主な害虫と対策方法について説明します。
主な病気と対策方法
もみじは梅雨時期に葉が白っぽくなるうどんこ病が発生することがあります。湿度が高い管理環境であったり、樹勢が弱っていると発生しやすい傾向があります。ベニカXやベンレート水和剤等、うどんこ病に効く薬剤を散布し、予防と治療を図りましょう。また日頃から、日当たりが良く、風通しの良い環境で管理することも重要です。葉が混んできたときは葉透かしを行い、通風を良くしてあげましょう。
主な害虫と対策方法
紅葉は春の芽出し時期にアブラムシやハダニなどの害虫が発生することがあります。薬剤はマラソン乳剤・スミチオン・ベニカX等が効果的です。定期的なチェックと予防消毒・駆除を行い、被害を最小限に抑えましょう。
紅葉盆栽の1〜12月の作業内容
以下では、モミジ盆栽の1〜12月の作業内容を月ごとにまとめて説明します。
1月の作業内容
- 室内・ムロ・温室で霜避け、凍結防止する。
- 休眠中に剪定すると水を吹いて樹勢が低下するため、剪定は厳禁。
- 針金形成可能。枝を折らないように注意。
2月の作業内容
- 室内・ムロ・温室で霜避け、凍結防止する。
- 2月下旬頃から植替え作業可能。
- 針金形成可能。枝を折らないように注意。
- 接木・取り木作業可能。
3月の作業内容
- 植替えの適期。
- 剪定可能。尚、植替えした場合は2週間程度剪定は剪定を避けましょう。
- 芽出し時期のため、完成木はすぐに芽摘みを行う。若木で枝作りしていない場合はしなくてもよい。
- 不要な芽は芽かきする。
- 施肥開始。完成木の施肥は少量。
- 病害虫チェック・消毒・予防。
4月の作業内容
- 芽摘み・芽かき継続。
- 施肥継続。
- 病害虫チェック・消毒・予防。
5月の作業内容
- 小枝の剪定。輪郭から飛び出したり、枝が混んできた箇所を剪定。
- 芽摘み・芽かき継続。
- 施肥継続。
- 病害虫チェック・消毒・予防。
- 不意に気温が高くなるため、灌水注意。
- 休眠期に針金をかけた場合は食い込みチェック。食い込んでいる場合は外すこと。
6月の作業内容
- 葉透かしを行う。
- 葉刈り・片葉刈りを行う(樹勢が弱い木は厳禁)。
- 小枝の剪定。輪郭から飛び出したり、枝が混んできた箇所を剪定。
- 芽摘み・芽かき継続。新芽の出が落ち着いてきたら終了。
- 施肥継続。梅雨時期になったら肥料を外す。
- 病害虫チェック・消毒・予防。梅雨時期の為、要注意。
7月の作業内容
- 日中日差しが強い際は直射日光が当たらないよう、寒冷紗等で日よけする。
- 日中日差しが強く暑かった場合、夕方に葉水を行う。
- 高温による水分不足に注意し、適切な灌水を行う。
- 病害虫チェック・消毒・予防。
8月の作業内容
- 日中日差しが強い際は直射日光が当たらないよう、寒冷紗等で日よけする。
- 日中日差しが強く暑かった場合、夕方に葉水を行う。
- 高温による水分不足に注意し、適切な灌水を行う。
9月の作業内容
- 秋肥開始。紅葉させる場合は施肥はしないか少量にする。
10月の作業内容
- 施肥継続。
11月の作業内容
- 施肥継続。
- 紅葉の鑑賞が済んだら、葉刈り。
- 葉刈り、落葉直後のみ剪定可能。
12月の作業内容
- 紅葉の鑑賞が済んだら、葉刈り。
- 葉刈り、落葉直後のみ剪定可能。
- 寒くなってきたら、ムロなどで保護する。
紅葉盆栽の植替え
紅葉盆栽の植替えは、根の健康と成長を促すために重要な作業です。以下では、植替えの時期とタイミング、植替えのやり方、植替え後の保護について説明します。
植替えの時期とタイミング
紅葉盆栽の植替えは、通常は2月下旬~3月下旬くらいまでに行います。春の植替えは新芽が成長してくる前に行うようにしましょう。樹の生育状況や根の状態を観察し、植替えが必要と判断された場合に行いましょう。
植替えのタイミングは、根が詰まっていたり、用土の劣化が進んでいる場合に行います。若い木は1~2年、古い木・完成樹は2~3年ほどに1回が植替え目安となります。尚、剪定や針金かけ等作業をした場合は、2週間以上おいてから植替えをした方が、樹の負担を軽減し、枯れるリスクを低減できます。また、植替えをしない樹も、水の通りを良くするため表面の土は新しく変えたほうが良いです。
植替えのやり方
植替えの手順は以下の通りです。
- 樹を鉢から抜く。
- 古い用土を取り除き、根を傷つけないように整理する。根が鉢に絡まっている場合は、慎重に解きほぐす。枯れた根を切り取る。
- 鉢に固定用の針金をセットし、配合した用土を入れる。
- 樹を鉢に入れ、用土を適量入れる。
- 樹を鉢に入れた用土の上に置いて高さを調整し、セットした針金で樹を固定する。
- 用土を入れていく。
- 植替え後は水の濁りが無くなるまで十分に水を与える。
植替え後の保護
植替え後は盆栽を適切に保護することが重要です。以下の点に注意して管理しましょう。
- 植替え後の数週間は直射日光や強い風に当てないようにし、施肥も控える。
- 盆栽の水分管理に注意し、乾燥を避ける。表土の上にミズゴケを置くのも良し。
植替えは根の健康を保ち、樹の成長を促すために重要な作業です。定期的に行い、樹の状態に合わせて適切な植替えを行いましょう。
紅葉盆栽の芽摘み
芽摘みの目的と作業時期
モミジの芽摘みは、新芽を指先や鋏で摘み取り、芽の成長を止めることで小枝の発生を促すこと、枝の節間を短くするのが目的です。芽摘みをしっかりと行うことで、枝の詰まった形小相大な盆栽が出来上がります。完成木は枝を作るために積極的に芽摘みを行いますが、若木で今より大きくしたい木には芽摘みは不必要です。
芽摘みの作業時期は、通常3~6月頃までの芽が出てくる間に行います。
芽摘みのやり方
芽摘みは以下の手順で行います。
- 新芽を指先や鋏で摘み取る。鋏で摘み取る際は葉の基部で剪定すること。
- 上記1を、全体的に、継続して行っていく。
詳しくは下の動画をご覧ください。モミジには袴と呼ばれる部分もあり、この部分を摘み取ることで節間が間伸びしづらくなるという説もあります。
紅葉盆栽の芽かき
芽かきの目的と作業時期
芽かきの目的は、枝の芽数と胴吹き芽を調整し、無駄な芽に無駄な栄養を使わないようにすることです。また枝がごつくならないようにする目的もあります。新芽が多数出てしまうと、風通しも悪くなり、健康な成長を妨げることがあります。芽かきによって、不要な新芽を摘み取ることで、美観の向上、健康な成長を促進します。
芽かきの作業時期は、通常は3月~6月の不定芽が頻繁に出る時期に行われます。まだ芽出ししていない状態で行うことが望ましいです。
芽かきのやり方
芽かきは、以下の手順に従って行います。
- 樹全体を観察し、枝先に密集している芽と胴にある芽を確認します。
- 不要な新芽の基部付近を指やピンセットで摘み取ります。
- 枝の芽数が均等になるようバランスを考慮しながら、全体的に作業を進めていきます。
紅葉盆栽の剪定
剪定の目的と作業時期
剪定の目的は、不要な枝を切除し美しい樹形を作り出すこと、枝の少ない箇所を剪定し小枝を増やすこと等です。モミジは春に一斉に新芽が吹いてきて、すぐに形が乱れてきます。剪定によって、不要な枝や長く伸びた枝を切り詰め、形を整えます。
剪定の作業時期は、通常は3月の芽出し前、5~6月、11~12月の落葉直後に行います。休眠期に入ってから剪定すると切り口から水が吹き出してきて、樹勢が落ち、枯れるリスクがあります。
剪定のやり方
剪定は、以下の手順に従って行います。
- 盆栽全体を観察し、不要な枝や形を崩している枝を特定します。
- 特定した枝を剪定します。太い枝を切る際は、又枝切鋏を使用すると切り口の治りが早まります。
剪定は慎重に、バランスを考慮しながら行うことが重要です。また、剪定後は盆栽の状態を観察し、適切な手入れを行ってください。
紅葉盆栽の針金形成
針金形成の目的と作業時期
針金形成の目的は、盆栽の枝や幹を自在に曲げることによって、美しい形を作り出すことです。もみじは、成長した枝や幹が直線的に伸びてしまい、盆栽らしい形を損なってしまいます。針金を使って枝や幹を曲げることで、盆栽としての形に調整することができます。尚、モミジなどの雑木類は鋏づくりという、針金を使わずに剪定により形を作っていく方法もあります。
針金形成の作業は、通常は休眠期の1~2月頃に行います。この時期は五葉松盆栽の休眠期であり、枝や幹が柔軟に曲がりやすくなります。また、針金を巻いたままの期間も長くなるため、枝や幹に針金の跡が残ることなく、曲を付けることができます。
針金形成のやり方
針金形成は、以下の手順に従って行います。
- 針金の太さや種類を選びます。針金の太さは、曲げたい枝や幹の太さに合わせて選びます。基本的には、枝の直径2/3程度の太さの針金を使います。
- 曲げたい枝や幹に対して、針金の中心部からスタートさせます。針金を巻く際は、均等に力を加えながら、ゆっくりとかけていきます。重要なのは、枝や幹を無理に曲げず、徐々に形を整えることです。
- 針金をかけた後は、幹の形を整えるために、枝を調整します。
針金をかける際は、盆栽に傷をつけないように注意しましょう。また、針金をかけた後は、枝の状態を定期的に確認し、針金の跡が残らないように適切な手入れを行ってください。
紅葉盆栽の葉透かし
葉透かしの目的と作業時期
葉透かしは、今年の葉を透かし全体の葉の量を調節する作業です。葉透かしの目的は、日当たり・風通しの改善と、美観を整えることです。大きな葉を中心に剪定して減らしていきます。大体葉の間から幹や枝がすけて見えるくらいが丁度良いです。
葉透かしの作業時期は、6月の梅雨前の葉が固まった頃です。
葉透かしのやり方
葉透かしは以下の手順で行います。
- 葉の混んでいる箇所を探し、鋏で透いていきます。
- 葉透かし後は、盆栽全体の形やバランスが整っているかを確認し、必要に応じて剪定を行います。
葉透かしによって通風・日当たりが改善し、病害虫を予防し健康的な成長を促すことができます。ただし、透かし過ぎると樹勢が落ちて枯れるリスクもあるので注意が必要です。適度な葉透かしを心がけましょう。
紅葉盆栽の葉刈り
葉刈りの目的と作業時期
葉刈りは葉を鋏で切り取ることで、小枝を増やしたり、勢いの強い枝・頭部や枝先など勢いの強い部分を抑制し、樹勢を平均化することが目的です。樹勢の弱い木に行うと、芽がうまく出てこなかったり、最悪の場合、枯れるリスクもあるため、前年からしっかりと施肥してあげるなど、準備と見極めが必要です。完成木や古い木にはあまり施さないほうが良いでしょう。
葉刈りには、全ての葉を切る全葉刈りと、2対の葉の片方だけ切る片葉刈りの2種類があり、モミジは基本的に片葉刈りを行います。樹勢の強い若木には全葉刈りをしても良いでしょう。
作業時期は、葉が固まってきた6月頃です。
葉刈りのやり方
- 盆栽全体をよく観察し、葉刈りを行っても良い枝を特定します。
- 葉を葉柄を残して鋏で切り取ります。
- 全体的に葉刈りできれば終了です。枝の勢いを確認し、弱い枝は何も手を付けないのも手です。
紅葉盆栽を増やす方法
モミジを増やす方法は、主に以下の種類があります。
- 実生(みしょう)
- 挿し木(さしき)
- 接木(つぎき)
- 取り木(とりき)
詳しい方法については以下のリンク記事をご覧ください。
紅葉盆栽の購入場所
紅葉盆栽は、盆栽園や園芸店、ネットショップ等、様々な場所で購入できます。
盆栽の購入場所については、以下のリンク記事をご覧ください。
紅葉盆栽の育て方のまとめ
紅葉盆栽の育て方について、魅力や特徴、管理方法、作業内容、繁殖方法、購入場所などを詳しくご紹介しました。ここで最後に、紅葉盆栽の育て方のポイントを簡単にまとめてみます。
- 紅葉盆栽の魅力は、春の芽出しから秋の紅葉、冬の寒樹姿と季節ごとの変化が楽しめることです。
- 紅葉盆栽の管理には、適切な管理場所の選定、用土の選び方や配合、灌水のタイミングと頻度、施肥の方法とタイミング、病害虫対策などが重要です。
- 1月から12月までの作業内容を季節ごとに把握し、適切な手入れを行いましょう。
- 植替えや芽摘み、葉透かし、芽かき、剪定、針金形成などの手入れは、盆栽の形成や健康維持に重要です。
- 繁殖方法としては、実生、挿し木、接木、取り木などの方法があります。それぞれの方法と時期を理解して取り組みましょう。
- 盆栽園、園芸店、ネットショップ、オークションなど、購入場所は自分のニーズに合わせて選びましょう。
以上が紅葉盆栽の育て方に関する情報です。紅葉盆栽は日本独特の美しい文化であり、その育て方を学ぶことは癒しや自己成長にもつながるでしょう。ぜひこの記事を参考にして、紅葉盆栽を楽しんでください。
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